財布を拾った

本日の夕方に近所の家電量販店に行った。
そして帰りに駐車場に停めてあるクルマまで向かっていた際、とあるクルマの横に財布が落ちていた。
遠目で見ても明らかに財布である。

おいおい、どう見ても財布じゃねぇかバカヤロウ。

と思いながら拾って間近で見てみるとシャネルのファスナー式の女性用長財布であった。
厚さも1.5cmぐらいあり、多くのものが入っていると思われる。
中を開けて免許証などを確認してもいいのだが、それを誰かに見られると逆に怪しまれるのでやめた。

さすがにこれをこのまま放置するのはマズイので、面倒だったがその店舗のサービスカウンターまで持って行った。
おそらくすぐ横にあったクルマの人が降りる際に落としたのだろうと思われるので、そのクルマのナンバーを伝えて私は自分のクルマまで戻った。
そしてクルマでタバコを吸いながらふと思ったのは、

こういう状況でそのまま財布の中身を持ち去る悪い人間のほうが今の世の中うまくやっていけるのではないか?

ということだ。
財布を拾った際にそのような発想が全くなかったのですぐにサービスカウンターへ持って行ってしまったが、本来今の世の中ならあれはご祝儀としていただいてしまっても良かったのではないのだろうか。
などと考えていると、財布があった場所のクルマの夫婦が帰ってきた。
ちゃんと財布を受け取れたか確認しておこうと思い近寄って聞いてみると、なんと「受け取っていない」とのことだった。

というわけでサービスカウンターまで連れて行き、その人は無事に財布を受け取ることができたので喜んで帰って行った。
ちなみに私はその後ほっともっとでから揚げ弁当を買って帰った。
負け犬感満載である。

そして数時間が経過した現在。
どれほどの金額が入っていたのかは知らないが、やはりあれはありがたく頂戴しても良かったのではと今でも少し思っている。

日頃、行った店の店員の態度の悪さや商品の不具合などに関してクレームの電話を入れたり、過去に勤めていた職場などで「殺すぞババア!!」とか「調子に乗るなよ! ぶち殺すぞ!!!」などとドでかい声で叫んだりしたことが何度もあり完全に悪人である私であるが、なぜかこういう状況においては善人である。
こういう中途半端な立ち位置なのがいけないのだ。
善人であるに越したことはないが、悪いならとことん悪い人間に進む人のほうがそれはそれで世の中上手くいくのではないかと思う。

そのような徹底した悪人を目の当たりにすると私のような中途半端な人間はきっとこう叫ぶのだろう。

「さすが!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる!あこがれるゥ!」